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チョコレートとバターの科学

11月は、ケーキ屋にとって“チョコレートの黄金期”。
気温と湿度が安定し、テンパリング(結晶化)が最も美しく決まる季節です。


1. テンパリングの妙技

チョコレートは、ただ溶かして固めれば良いわけではありません。
結晶構造を整えることで、ツヤと口溶けが変わります。

温度曲線の目安は:
① 溶解:45〜50℃
② 冷却:27℃
③ 再加熱:31℃

この数℃の違いで、仕上がりがまったく変わる。
職人は温度計ではなく、“チョコの光”を見て判断します。


2. バターと生クリームの関係

11月の冷え込みは、バターを扱いやすくする季節。
夏場よりも溶けすぎず、空気を抱き込みやすい。

「ふわっとした口溶け」は、このバターの“立ち上がり”で決まります。
パティシエは泡立て器の抵抗、バターの色の変化、音のわずかな違いで状態を見極めるのです。


3. 素材への敬意

パティシエにとって材料は“生きもの”。
産地、季節、湿度、温度、その日の空気。
すべてがケーキの味を左右します。

だからこそ、素材に触れる手はいつも丁寧でなければならない。
「混ぜすぎない」「焼きすぎない」——それは科学であり、感性でもあります。


4. まとめ

11月のケーキ屋は、甘さの中に“精密な計算”が潜む世界。
科学と芸術、感覚と理論。
そのすべてを一皿の中で融合させるのが、パティシエの仕事なのです。