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ケーキ屋の厨房は、朝が早い。
まだ外が薄暗い時間にオーブンが温まり始め、
まるで一日の始まりを告げる鐘のように「カチッ」とタイマーが鳴る。
パティシエの仕事は、単なる調理ではない。
それは“温度と感覚を操る技術”であり、
甘い香りの中に潜む、緻密な計算の積み重ねです。
午前6時。厨房に明かりが灯る。
バターを常温に戻し、スポンジの材料を計量し、
前日の焼き型やボウルを整える。
パティシエは、朝の静かな時間を何より大切にします。
この時間に、その日の“リズム”を整えるのです。
泡立て器の音、オーブンの温風、湯煎の蒸気——。
厨房はまるで音楽のように調和しています。
午前10時。開店準備が始まります。
焼き上がったタルトにクリームを絞り、フルーツを並べ、
艶やかなナパージュ(ゼリー)を刷毛で塗る。
パティシエの手元から生まれたケーキは、
ショーケースに並んだ瞬間、作品へと変わります。
「このケーキは午後のお客様に」「このタルトはギフト用に」
販売スタッフとの連携も欠かせません。
一つのケーキに、チーム全員の想いが込められているのです。
閉店後の厨房は再び静寂に包まれます。
翌日のスポンジを焼き、シロップを煮詰め、飾り用のパーツを準備。
焼き上がったばかりの生地の香りが、1日の疲れを癒してくれます。
「今日はここまで」
パティシエたちは互いに声をかけ合いながら、
少し誇らしげに、ケーキの列を眺めます。
パティシエの仕事は、華やかに見えてとても厳しい。
温度、湿度、時間、材料、すべてが1mm単位の世界。
でもその先にあるのは、お客様の「美味しい笑顔」。
「またこのケーキが食べたい」
その一言が、次の日への原動力になるのです。
11月の冷たい空気の中で、
ケーキ屋の厨房にはあたたかい湯気と甘い香りが立ち込めています。
パティシエたちは今日も、“手の温度”で幸福を作っています。